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「明朝体はいらない子?」

June 13, 2017

ほんのひと眠りしたら、1ヶ月経ってしまってた人の話をご存知ですか?

 

ええ…。前回のブログの更新が1ヶ月前でした。ああ恐ろしい!!

 

浦島太郎はご馳走を食べ、タイやヒラメの舞い踊りを見ている数日の間に、何年も経っていたといいますが、わたしは息吸って寝てるだけで1ヶ月。なんて理不尽!!

 

 

というわけで、1ヶ月ぶりにこんにちは(しれっ)。

フォントかるた制作チーム、解説担当の2号です。

 

 

さて先日、フォントかるたを二十歳くらいの学生さんたちに遊んでいただいていたときのこと。

 

「明朝体は古臭いからいらないー。ゴシック体だけあればいい!」

 

という、衝撃的なご意見をいただきました!

 

きゃー˚‧º·(˚ ˃̣̣̥᷄⌓˂̣̣̥᷅ )‧º·˚ショックー!

 

 

 

左は筆の運びを残した抑揚のある線や、『ウロコ』と呼ばれる線端・角のエレメントが特徴の明朝体。右は線の太さを揃えてシンプルに文字を描くゴシック体。

 

確かに見慣れたスマホの文字はみんなゴシック体。アプリも、ゲームも、ニュースも広告も、ほとんどゴシック体。看板やレポートや社内文書もゴシック体、プレゼン資料もグラフの注釈もゴシック体が全盛ですよね。

 

じゃあ明朝体はいつ使うの?

 

今でしょ!(古いけどお約束)

 

 

 

じゃなくてね。

 

古今東西、新聞や書籍は明朝体が標準なんです。

特に縦書きで、文章が長いものは明らかに明朝体が読みやすい。と、されています。

 

なぜなんでしょうか?ちょっと考えてみましょう。

 

 

 

 

左の角張ったゴシック体に比べ、右の明朝体は柔らかな曲線が多いので、流れるように視線が動くのがわかりますよね。

 

また明朝体は、『漢字』と『かな』との差(コントラスト)がやや強いので、読み手の情報整理が行いやすいという特性があります。

 

 

明朝体は、中国の「明朝(1368年 - 1644年)」から名づけられた印刷用の書体です。

確かに歴史は古い!カビが生えてきて、ゾンビがわさわさ襲ってきそうな古臭さ!!

 

でもここで注目して欲しいのは、古さよりも「印刷用の書体」というところです。

 

筆文字では、書く人の個性が形になって現れます。そこにシビれるあこがれるゥ!わけですが、そりゃ読みやすい字も、読みにくい字もあろうってもんです。そして同じ人がずっと書かないと、一冊の本でも書体が統一できないYO!という弱点もありました。

 

横線を細く水平に、縦線を太く垂直に。また角には三角形のウロコを描くといった決まりのある明朝体なら、誰でも同じように書くことができます(だいたいね、だいたいよ!いきなり書けって言われたら難しいよね。知ってる)。

 

また明朝体の幾何学的なデザインは、当時の印刷方式の木版に彫りやすかったことから、印刷に適した書体として確立されたのです。

 

 

これは中国の漢字字典『康熙字典』を日本で翻刻したもので、安永9年(1780年)に作られました。木版印刷。同じ文字でも微妙に形が違うものの、統一された書体としてのデザインが施されているのがわかりますね。

 

 

この際に行われた筆文字の簡略化は、実は作り手側だけでなく読み手側にとってもたいへん機能的なものでした。

 

起筆や終筆といった筆の特徴は残しつつ、幾何学的な線で文字を構成することで、整理された中にも適度なメリハリがある読みやすい書体になったのです。

 

 

 

 

楷書体(左)と明朝体(右)。楷書体は筆致を比較的忠実に再現したデザインです。漢字の部分に注目してください。

 

明朝体は線が垂直・水平に整理され、直線的になっています。楷書体に比べて、文字の線が持つ「情報」が大幅に整理されていることがわかります。

 

情報が整理されることで、文字の持つニュアンスや個性といった表情は薄れますが、その分文字の意味や文章そのものに注意が向けられるようになるのです。

 

じゃあ、とことん整理したらその方がよいの?というとそうでもありません。

 

 試しに明朝体の特徴的なウロコなどの装飾を取って、横線を少し太くしてみました(書体デザイナーさまふぉんとにすみません。実験ですのでお許しを…)。上が通常の明朝体。下が2号改変の装飾なし明朝。

 

外してみるとよくわかります。ウロコには、目に「引っかかり」を作って、文字の中の見るべきポイントに視線を誘導するという役割があったんですね。

 

 

情報を整理する。でも削ぎ落としすぎると、味気もなくなり逆にスルッと読み飛ばされてしまい印象に残らない。この絶妙なバランスを保ったところにある機能美こそが、明朝体の最大の魅力なのです。

 

明朝体は書体としての歴史が長いだけでなく、最もスタンダードな書体として使われて続けているだけの理由がちゃんとあるのですよ。ふぉんとに、ふぉんとに!

 

 

少し前はデジタルデバイスやプリンターなども解像度が低く、繊細な明朝体は表示しにくかったことから、ゴシック体の天下が続いていたわけです!が、デバイスの高精細化も進んで、今ならもう明朝体不利の状況はなくなってきています。明朝体の読みやすさが、改めて認識されつつあるところ、なう!なのですよー!

 

だから、新しい明朝体も続々作られています。

 

 

こちらはデジタルデバイス用に開発された、スマートで美しい現代感のある『TP明朝』。ウエイト(線の太さ)の他に、「コントラスト」が選べるのが新しい!

 

 

 

 

 

活字時代のデザインを、デジタルデバイスでも読みやすいようアレンジして復刻された『凸版文久明朝体』。スタンダードな中にもメリハリの効いたデザインです。

 

 

 

 

 

日本語だけでなく、簡体・繁体中国語、韓国語までも網羅したオープンソースフォントとして、大いに話題になった『源ノ明朝』。派生フォントも続々デザインされています。

 

 

 

もちろん読みやすさだけでなく、明朝体の柔らかな曲線が生み出す味わいや品格は、他のどの書体にもない魅力です。

 

先日地下鉄の駅で見かけた広告。キャッチコピーは、『筑紫オールド明朝』です。

 

85歳で現役スーパーモデルという、カルメン・デロリフィチェさんもたいへんに美しいですが、このキャッチコピーの書体はしなやかで、品があって、人生の深みや豊かな味わいが表現されていると思いませんか?

 

 

ね?ね?明朝体いらないとか言っちゃダメダメ~!

 

2号の明朝体愛は、まだまだ止まりません。

次回もたぶん明朝体の話の続きになりますよ。(次回まではひと眠りしないように)

 

 

ちなみに今回ご紹介した明朝体のひとつ、凸版文久明朝体は、フォントかるたにも収録されています。

 

「の」の字の、筆の入りがクッ!!ってなってるところに注目すると取れますよ!クッ!!って!

 

 

 

 

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